起業する時の資金調達方法として、自己資金、金融機関借入、出資を受けるなどがありますが、国や自治体が交付している助成金を活用するのも手です。
助成金は返済の必要が無く、出資を受けるわけでもないので、毎月の返済や株式持ち分を気にすること無く資金を獲得できるというメリットがあります。
今回は私自身も利用した東京都中小企業振興公社の創業助成金について紹介します。
東京都中小企業振興公社とは
東京都中小企業振興公社は、都内中小企業の経営を支援する機関です。
創業から事業化(製品開発・販路開拓・助成金)、事業承継・再生まで、企業のあらゆるステージに対して豊富な支援メニューを用意しています。
もともとは、中小企業の下請取引の紹介等を行うため、東京都により財団法人東京都下請企業振興協会として設立されたのがはじまりで、その後、事務の移管や団体の統廃合などに伴い、事業範囲を拡大してきました。
東京都中小企業振興公社のオフィシャルサイト
創業助成金の金額や申請スケジュールなど
中小企業振興公社が実施している創業助成事業で、毎年4月ごろと10月ごろに募集があります。
募集は東京創業ステーションの創業助成事業の中で発表されるので、時期を逃さないように2ヶ月くらい前からチェックしておきましょう。
助成金額
助成限度額:300万円(下限100万円)
実際にかかった経費の3分の2以内まで助成されるので、450万円の経費がかかったら300万円満額まで支給されます。
対象経費
従業員人件費、賃借料、専門家謝礼金、広告費、備品費、産業財産権出願・導入費
同じ経費を他の助成金と重複受給することはできないので、申請時にどの経費を対象にするか選ぶ時に、他の助成金でもらえそうなものは外しておきましょう。
例えば従業員人件費は厚生労働省のキャリアアップ助成金でも出るので、創業助成金では対象経費として申請しないということです。
助成金支給までのスケジュール
実は審査に通って助成が決定してから実際に交付されるまでは1年以上かかります。
助成金ありきではなく、自己資金や借り入れなどで事業を継続できるように計画を立てておきましょう。
10月募集に申請した場合
10月に申請書提出
↓
12月上旬に書類審査合否の通知
↓
1月中旬に面接審査
↓
3月1日に助成金支給の決定
↓
3月1日~翌年2月29日までが助成対象期間
↓
助成期間内に支出した対象経費の報告提出
↓
完了検査をして5月~6月ごろに助成金の支払い
助成対象者と申請要件
助成対象者
・東京都内で創業を予定している個人
・創業5年未満の中小企業者(法人は設立登記、個人は税務署への開業届から5年未満)
・法人登記から5年未満のNPO法人(中小企業者と関連する事業内容)
※助成対象期間中は個人事業主から法人に切り替えることはできないので、法人で申請するか個人で申請するか決めておいて、法人設立のスケジュールを立てる必要があります。
申請要件
・TOKYO創業ステーションの事業計画書策定支援終了者
・東京都制度融資(創業)利用者
・都内の公的創業支援施設入居者
・認定特定支援事業による支援を受け都内区市町村長の証明を受けた方 etc…
聞きなれない要件がたくさん並んでいますが、どれか一つの申請要件を満たすことは誰にでもできます。
私の場合は商工会議所の主催している創業セミナーに4回出席することで、認定特定創業支援事業の支援を受けたことになり、申請要件を満たすことができました。
申請日までに要件を満たさないと申請できないので、複数回にわたって支援を受ける必要のある場合はそのスケジュールを計算に入れておきましょう。
助成金の申請方法
申請期限の2ヶ月前くらいから東京創業ステーションの創業助成事業のサイト内で説明会の日程が掲示され、1ヵ月半前くらいから提出書類がダウンロードできるようになります。
※説明会に出席しなくても申請は可能です。
ダウンロードした提出書類を作成して、期日までにレターパックなどで東京都中小企業振興公社に送付します。
書類審査に通過したら面接審査の日程が通知されます。
助成金がもらえるかどうかは書類審査と面接審査で判断される
中小企業振興公社の創業助成金は申請すればだれでももらえるという助成金ではありません。
税金を使って助成をする以上、その事業がしっかりと社会に貢献して継続していけるかどうかを書類と面接で審査されます。
書類審査で評価されるポイント
記載する内容は以下の項目で、書類審査ではそのビジネスモデルについて網羅的に評価されます。
事業内容や販促方法に加えて、資金計画や資金繰り表も作成する必要があるので、できれば提出期限の1ヶ月前くらいから取り掛かり始めることをお勧めします。
事業内容
商品・サービス
活用する申請者の強み
想定顧客
収益獲得の仕組み
助成を受けることで充実できる内容
事業実施により実現したい内容
マーケティング
市場について(特徴・規模等)
競合他事業者との差別化
商品・サービスの開発計画・店舗等の開業計画
販売戦略(ターゲット、販売方法、販売見込み)
市場の拡大の可能性
実現性
事業推進に必要なヒト・モノ・ノウハウの調達
助成対象期間中の商品・サービスの提供見込み
事業リスク及びその解決策
助成金を受けることによる効果
事業実施による地域経済への波及、社会貢献、課題解決
資金計画
助成対象期間内において、助成事業に必要な全ての経費とその経費の調達方法
経営計画
申請書提出日を基準として、当年度以降の事業スケジュール(実施時期と具体的な実施内容)
資金繰り表
月次の収入と支出の一覧表
経営収支(見通し)
申請書提出日を基準として、当年度以降の事業の見通しを記入
面接審査で評価されるポイント
30分の持ち時間の中で、最初の10分間で事業内容のプレゼンテーション、その後の20分間で審査担当の中小企業診断士2人からの質問を受けるという形になります。
プレゼンや面接・スピーチで緊張せずに話す5つの超実践的テクニック
面接審査で聞かれる質問内容などは公表してはいけない決まりになっているので控えます。
必ず代表者本人が出席しなければならないので、その人が助成にふさわしい人物かどうか、その事業を遂行していくことのできる人物かどうかが審査されていると思います。
資金調達という点で300万円はそれほど大きな金額ではありませんが、創業時~2年くらいの立ち上げ期においては、返済の必要がない助成金はありがたい存在です。
書類の作成は少し大変ですが、自分の始めるビジネスについて考えていたことを書面に落とすと、頭の中が整理されるというメリットもありました。
書類作成に自信がない場合はプロに依頼する
事業計画や資金繰り表の作成に自信が無い場合は、助成金申請に強い税理士事務所や行政書士に依頼するのが得策だと思います。
特に確実に助成金を受けたい場合はプロに相談すべきです。
専門家に依頼したいけれど誰に相談してよいか分からないという方は、6,000件以上の資金調達支援実績を持つ起業家支援のプロをご紹介しますのでお気軽にご相談ください。