「従業員のモチベーションを上げたい」
「従業員がやる気を出して自発的に仕事をしてくれたら…」
こう思う経営者や店長は多いのではないでしょうか。
しかしながら従業員のモチベーションを上げようとして、実はモチベーションを下げるような関わり方をしてしまっている残念なパターンもあります。
この記事では私の経験と行動科学の理論からモチベーションを上げるステップを紹介します。
モチベーションに関わる経験
私は大学生時代にキャバクラでアルバイトをしていて、マネージャーとして15人くらいの担当キャバ嬢を抱えていました。
キャバクラのマネージャーの評価は担当キャバ嬢の成績で決まります。
大きな繁華街ではなく、ローカルな街のキャバクラだったので、「お金を稼ぎたい」という明確な目的があって入店してくる女性は多くなく、やる気のない女性に指名を取ってもらうのに苦労しました。
その後大学を卒業して新卒で入社した会社は社員研修や人事制度構築などを提供する人事系のコンサルティング会社で、そこで人間の行動や組織に関する知識を理論的に学びました。
モチベーションを上げたい時にやってはいけないこと
従業員のモチベーションを高めようして、いきなり会社の良さや仕事のやりがいを熱く語ったりしていませんか?
これは逆効果です。
本人が既にやる気になっていたり、会社やあなたのことを好きになっていたりすればよいのですが、そうでなければ「ウザい」と思われておしまいです。
私も熱く語りかければ語りかけるほど相手との温度差が大きくなっていくのを感じ、焦ってしどろもどろになってしまった苦い経験があります。
会社の良さや仕事のやりがいを伝えたい時には、何かの話の流れの中で「自分は〇〇なところが好きだな」とさらっと一言で話すくらいに留めましょう。
その良さに相手も共感してくれればもっと話を聞いてくれるかもしれませんが、そうでなければその良さは相手にとっては関心がないのでいったん引き下がりましょう。
モチベーションを上げるステップ
モチベーションを上げるには常に相手主体の関わり方、話し方をすべきです。
本人の希望や願望を引き出すことから始める
これが最重要かつ最大の効果を発揮するポイントです。
話の中心は常に相手からスタートし、本人の欲しいものや叶えたい願望を引き出し、それを達成するのに会社や仕事がどんな風に役立つのかを伝えなければなりません。
面談という形式をとらなくても、何気ない雑談で仕事や趣味、プライベートの話などをする中で、本人が欲しいと思っているものややってみたいと思っている経験などを引き出して理解していくのです。
そして仕事がどのようにその希望や願望達成に役立つかを伝え、具体的にやることを一緒に考えていきます。
ここまで来て初めて従業員は仕事に関する話を聞く態勢になってくれます。
やって欲しい行動は相手にしゃべらせる
人間は自分が言ったことに対して一貫性を持ちたいという欲求が働きます。
上司と部下で話す割合は2:8くらいが望ましく、その中で「仕事を頑張る」という上司としてやって欲しい行動を本人の口から言わせるという流れが理想的です。
熱くなって自分ばかりしゃべっていることに気づいたら一度クールダウンし、質問を投げかけたり、相手の話を深く掘り下げたりして聞き役に戻りましょう。
成功体験を積ませる
自分がやったことに対して成果が出ると楽しいもので、成果が出始めたらさほど上司が関与しなくても勝手にモチベーションは上がります。
その成果が本人の願望につながるものであればなおさらです。
まずは小さなことでもいいので達成感を味わえる目標を共有し、実際にやらせてみましょう。
自発的な行動を促す期待理論
モチベーション理論の一つに、人は
意欲/欲求 × 期待 × 報酬/誘意性
の関数で行動するという理論があります。
やりたいという意欲、自分でもできそうだという期待、やって得られる報酬(誘意性)です。
例えばある部下にプロジェクトリーダーを任せたいと思った時に、その人物は一度個別に話をし、その後店舗のミーティングなど皆の前で公式に役割と権限を与えます。
プロジェクトが成功したら昇格するという報酬を付けてもいいでしょう。
個別に話されて「上司から頼りにされている」と感じ(意欲)、皆の前で権限とサポートの約束を取り付け(期待)、プロジェクトが成功すれば昇格できる(誘意性)、と感じられることができれば行動してくれることでしょう。
モチベーションが高い状態を持続させて自発的に仕事をしてくれるようになるには時間がかかります。
そしてモチベーションというのは常にその人本人から内発的に高まってくるものです。
上司が従業員のモチベーションを上げるためにできることは、本人のことを中心に考えた適切なコミュニケーションなのです。